誰かの気配を感じる。 簡単に消せる気配を敢えて消していない気配だ。 俺は閉じていた目を開き、そちらの方へと視線を向ける。 「よぉ、あんたか」 軽く手を上げる俺に向こうも律儀に応えてくれた。 見た目は若く見える男。 多分、実際の年はさほど離れていない、と推測している。 あくまで推測なのだが…。 「珍しいな、今日は一人か」 周囲に普段は彼と共にいる子供達の姿はない。 「どうしてここにいるのか、と言いたそうな顔だな」 俺はそう言ってやや自嘲気味な笑みを浮かべる。 ここは廃棄都市。 エクスキューターの脅威が去ったとは言え、まだまだ危険の多い場所だ。 そんなところに俺は一人、足を踏み入れている。 「あいつが…まだ見つからないんだ」 「ここにいるのか?」 首を振り、俺は座り込んでいた残骸から腰を上げる。 「わからない。 だが、ここにこればあいつに会える気がするんだ」 十六夜…お前は今どこにいる? 何をしている? あいつの死体は見つかっていない。 生きている確証は無いが、それだけであいつは生きている、と思える気がした。 銃を抜く気配。 「おいでなさったか」 俺も近づきつつある気配に気がつき、アサルトライフルを構える。 「ATが無いと何とも心細いものだな。 だが…あんたがいると心強いぜ」 気配は6つ。 不安や恐れはない。 俺はまだ死ねないし、死ぬ気もない。 やるべき事はまだまだ山積みなのだから…。